静岡県庁・浜松市保健所・静岡市保健所

医療法人とは…その概要

個人で開業していた病院、診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする社団又は財団は、所轄官庁(静岡県内では、静岡県、静岡市、浜松市です。)の認可を得ることで、医療法人として法人運営をすることができます。

病院、診療所が医療法人となることにより得られる様々なメリットがありますが、デメリットもあります。病院、診療所の運営について医療法第40条の2の考えに基づき、今後、より発展させるために医療法人にすることが地域医療の貢献につながり、メリットを十分享受できると判断された時には、いますぐ、ご相談のうえ申請されることをお勧めいたします。

【医療法第40条の2】医療法人は、自主的にその運営基盤を図るとともに、その提供する医療の質の向上及びその運営の透明性を図り、その地域における医療の重要な担い手としての役割を積極的に果たすように努めなければならない。

医療法人の組織形態は、「医療法人社団」と「医療法人財団」の2つです。主に「社員」という人の集まりにより運営していく「社団」の形態で運営している医療法人が殆どです。また「医療法人社団」の場合、出資持分の有無より「出資持分のある医療法人」と「出資持分のない医療法人」に分けられ、現在設立する法人は、「出資持分のない医療法人」しか設立できません。平成19年医療法改正前に設立していた医療法人は、便宜上「経過措置型医療法人」と呼ばれています。出資持分がなくなったことで、事業継承や出資払戻し金返還請求による支出等を考えたとき個人的には、メリットが大きかったと思っています。

医療法人の種類

  1. 基金拠出型医療法人社団

    法人の資産となる現金、医業未収入金債権、医療機器等を出資という形でなく、返還期限を決めて募集し、拠出者と契約を行い設立をする法人です。 あくまで、「拠出金を返還する期限が定められている」ため、一般の会社でいうところの株式ではなく、「利息がつかない社債」という感じです。そのため、「拠出金を1,000万円以上にした場合、法人1期目から消費税の課税業者になりますか」という質問がよくありますが、資本金ではありませんので1,000万円以上にしても、消費税の課税業者には該当しません。

    より多くの拠出金を集めることで、「最新の医療機器の充実を早期に実現できる」「優秀な人材の確保」などの経営戦略を図ることが可能となります。実務的には、当事務所で設立する法人の場合
    、極力「低資金」での運営ができるように収支計画を立てています。

    当サイトでは、一般的な「基金拠出型医療法人社団」について解説します。

  2. 医療法人財団

    個人や法人が無償で寄付する財産(寄附財産)により成立する法人で、理事会と評議員が一定の運営方針に従い、その財産を運用していく法人

  3. 特定医療法人

    一定の要件(同族制限、役職員の年間給与総額が3,600万円以下、病床数など)を充足した上で、主務官庁(国税庁)に申請し、承認されると租税特別措置法により法人税が通常よりも低い軽減税率の適用を受けられる医療法人。

  4. 社会医療法人

    医療機関の経営以外に様々な収益業務の実施が可能である反面、救急医療、へき地医療などの公益性の高い医療を提供していくな法人ですが、平成26年4月1日現在、厚生労働省の統計において公表資料から静岡県では設立例はありません。これは、他県に比べ、静岡県の救急医療体制がすでに先進的に確立されているからではないかとわたしは考えています。

 

医療法人の構成(社員・理事・監事・拠出者)について

医療法人は、「社員」「理事」「監事」によって構成されていきますが、次の方は、選任することができません。

医療法第46条の2第2項

  1. 成年後見人または被保佐人
  2. 医療法、医師法、歯科医師法その他医事関連法令により罰金以上の刑に処せられ、刑の執行又は執行猶予期間が終了してから2年を経過していない者
  3. 禁固以上の刑に処せられ、刑の執行又は執行猶予期間が終了していない者

構成員について条件と役割について、以下解説していきます。

  • 社員

例外なく、15歳以上の者が「最低常時3人」以上、必要です。

医療法人を設立するとき、また運営上のキーパーソンは、「社員」です。ここが、非常に重要となります。医療法人の運営を実際に行うのは、理事ですが、医療法人をどうしていこうか、そのためにはどうしたらいいか指針を立て、「事業計画・収支予算」「決算承認」「定款変更」などを決定する最高意思決定機関は、この社員で構成される「社員総会」です。この会議の議決をするため3人以上必要となります。また ここの構成を誤ってしまいますと、医療法人の運営が大変な事となります。

また、よく混乱されますが、医療機関の従業員の方たちのことではありません。実務的には、よく「職員」とか「医療従事者」といって区別しています。

他の医療法人や株式会社といった「法人」及び「団体」が社員となることはできません。

  • 理事

原則、最低3人以上が必要です。 どうしても「理事を2名にしたい場合」ということも可能ですが、その場合、診療所1箇所のみ開設で、適任者が不在ということで「理事数特例認可」を得る必要があります。
「理事長」は、医師又は歯科医師である理事1名が理事を代表する代表者として理事会で選任された理事です。

※医療機関の「管理者」となる方は、必ず理事になっていなければなりません。分院の管理者が理事に新たに加わるというのが多い事例です。また、診療所1箇所の場合で、院長(管理者)=理事長ではなく平理事というのもあります。

任期は2年間です。理事のメンバーが変わらなくても「重任」ということで選任を行います。ただし、名目上の理事については、注意が必要です。

  • 監事

原則、1人以上が必要です。理事と同様に2年の任期となります。監事の職務は、医療法第46条の4において明文化されており、監事の選任には、十分考慮が必要です。
監事の職務は、以下のとおりです。

  • 医療法人の業務、財産の状況を監査する
  • 上記の監査の結果、不正の行為又は医療法、定款等に違反する重大な事実があることを発見した場合、所轄官庁又は社員総会に報告する
  • 上記内容を報告するため、社員総会を招集する
  • 業務、財産の状況について毎会計年度、監査報告書を作成し、当該会計年度終了後3ヶ月以内に社員総会又は理事に提出する
  • 医療法人の業務又は財産の状況について意見を述べる

具体的には監事は、保険診療を不正請求していないか、役職員へお金を貸付ていないか、貸付金に対して利息をとっていないか、個人的支出として資金が流出されていないか、理事等の理事報酬が不当に高くないか(医療法第54条剰余金の配当に抵触)を監査し、報告することが必要です。法人の財務諸表を監査できるものである必要があり、独立した業務を遂行する必要があるため下記の方は、選任できません。

  • 法人と利害関係のある営利法人(医薬品会社など)の役員及び職員
  • 理事の配偶者・兄弟姉妹等6親等の血族及び3親等の姻族
  • 当該法人の社員及び職員
  • 未成年者
  • 当該法人の顧問税理士及び税理士事務所職員

選任できないわけではありませんが、業務遂行能力を問われるケース

  • 職に就いたことがない方
  • 離職して長期間、無職でいる方
  • ご高齢な方
  • 個人事業主、会社員等であっても全くの異業種

上記の業務遂行能力を問われる方を選任したい場合は、なぜ選任したいのか。「○○ということから業務遂行能力があります。」という理由づけが必要です。

また公務員の方の場合、監事の職務から勤務するわけではないため、全くだめというわけではないはずですが、所属長からダメといわれるケースが多いようです。

 

  • 拠出者

拠出金を拠出する人です。ただし、出資者ではありませんので「拠出している」といって医療法人の運営について口出しをすることができません。

 

出資持分の有無と基金について

平成19年医療法改正前まで、医療法人社団を設立する場合、「出資金」を最初に投下し医療法人が設立されており、そのため「出資持分がある医療法人」と言われていました。現行の医療法では、出資持分という考えがなく、返還義務がある「基金」という形となり、「出資持分がない医療法人」となっています。

  • 「基金」としていくら拠出しなければならないのでしょうか?

いくら以上入れないとだめというきまりはありません。ただし、法人を設立したのち、運営をしていくために必要となる額です。当事務所では、目安として総資産のうち10%以上を現金出資するように提案しています。